「雨が降る前に膝が痛む」
「台風が近づくと腰が重くなる」
このような訴えは、整形外科の外来では決して珍しいものではありません。
では、天気や気圧と関節痛は、医学的に本当に関係があるのでしょうか。
現在分かっている科学的な見解をもとに、分かりやすく整理して解説します。
気圧・天候と関節痛に「関係がある」と考えられている点
1．気圧低下による体内圧の変化
低気圧になると、体の外からかかる圧力が低下します。
その影響で、関節内や周囲の組織（関節包・靱帯・滑膜など）がわずかに膨張しやすくなり、痛みの受容器が刺激されると考えられています。
2．自律神経への影響
気圧や天候の変化は、自律神経のバランスを乱しやすいことが知られています。
交感神経が優位になることで、
- 筋肉の緊張
- 血流の低下
が生じ、その結果、肩こりや腰痛、関節痛を強く感じやすくなる場合があります。
3．もともと問題のある部位が影響を受けやすい
天候の影響を受けやすいのは、
- 変形性関節症
- 関節炎
- 手術後や外傷後の部位
など、すでに炎症や変性が存在している関節です。
健康な関節では、天候の変化だけで痛みが出ることは多くありません。
気圧・天候と関節痛に「関係がない」とされる点
1．天候が痛みの「原因」になるわけではない
雨や低気圧そのものが、
- 軟骨をすり減らす
- 関節を壊す
といった直接的な原因になることはありません。
天候はあくまで「痛みを感じやすくする要因」であり、根本原因ではない点が重要です。
2．すべての人に当てはまるわけではない
気圧の変化に敏感な人もいれば、ほとんど影響を感じない人もいます。
これは、
- 自律神経の個人差
- 痛みの感じ方
- 生活習慣
などによる違いと考えられています。
3．「天気のせい」と決めつけるのは危険
天候の影響だと思い込み、受診を控えてしまうと、
- 骨折
- 神経障害
- 関節疾患の進行
などを見逃してしまう可能性があります。
受診を検討すべき症状
次のような症状がみられる場合は、
天候の影響と自己判断せず、整形外科での評価をおすすめします。
- 痛みが徐々に強くなっている
- 夜間や安静時にも痛みがある
- しびれや力が入りにくい
- 腫れや熱感が続いている
天候に左右されにくくするための対策
- 首・腰・膝などを冷やさない
- 無理のない範囲で体を動かし、血流を保つ
- 天候不良時は作業量を調整する
- 痛みが続く場合は、早めに原因を確認する
まとめ
天気や気圧は、関節痛を悪化させる「引き金」になることはありますが、原因そのものではありません。
「天気のせいだから仕方ない」と我慢せず、
症状に変化を感じた際には、早めにご相談ください。
